老犬ルーム

只今、宿直中です。

1頭のワンコが意識朦朧としながらも懸命に生きています。

この仔は17歳。16年間施設で暮らしています。

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私がこの施設にやってきて飼育員になった時、1番犬舎の1番奥に居ました。

私は昔からその犬種が大好きで(今は犬種なんか関係なく大好きですが)、

始めて見た時、直ぐに撫でたかったのですが、直ぐに先輩から注意点を聞かされました。

 

「絶対にお座りやお手などのコマンドは入れないで!」

 

この仔は、施設に来る前、とある訓練所で頑張ったのですが、

訓練内容が厳しかったのか、訓練が大嫌いになってしまったとの事でした。

歳のせいかおっとりしているのですが、コマンドを入れた瞬間、

襲いかかっているそうです。

 

飼育員は時に噛まれることもありますが、噛まれるということはその仔にとって

嫌なことをしているわけで、噛ませるようなことをしてはいけないし、

噛まれてそれを癖にするわけにもいかない。

先輩の教えに習い、言いつけを守りました。

 

掃除をしながらも

「うーん、触らせてくれそうだけどなー、嫌がるのかなー」と、

思いながらも隣で毎日犬舎を磨き、ご飯をあげていました。

 

犬小屋を移動する時、少しその仔の背中に手が触れました。

あれ?全然触れる?

普通に触らせてくれました。

 

話しかけたいけども、どの言葉をコマンドとして受け取るかは分からないので、

無言のコミュニケーションでした。

 

その仔もまた、歳を重ね、シニア犬が暮らすゴードン部屋、

介護が必要となる老犬ルーム・フィガロハウスへと移りました。

フィガロハウスでは専属のスタッフがリハビリしながら、

時間がゆっくりご流れています。

 

私は一度もこの仔の怒った姿を見た事がありませんが、

怒っていた時代よりも優しい顔つきに変わったのではないかな、と思います。

浅いこの仔の呼吸を見ると、色んな感情が沸き起こります。

飼い主を失った仔がどのような犬生を辿るのか。

 

かたや、毎日綺麗にしてもらえて愛情を一身に与えてもらえている仔達がいる。

 

何故、施設の仔達はそのようにしてもらえなかったのか。

施設のスタッフは皆、犬バカ猫バカの動物バカなので、

皆、この仔に微笑みかけます。

私達の微笑みは少しでもこの仔達の安らぎになっているのか?

 

すれ違い時の一撫で、すれ違い時の一声、大きなオヤツは一瞬でもこの仔たちに

幸せを与えられているか?

「大丈夫、きっと優しくて沢山甘えさせてくれる人に出会えるよ」

この言葉は勇気や希望を与えてあげているか?

 

それとも・・・

ウソつき!出会えなかったじゃないか!って、恨まれているか。

 

 

何度でも言います。

家族に迎え入れる前にあらゆる事を想像してください。

噛む仔になるかもしれない。

泣き続ける仔になるかもしれない。

近所から苦情が来るかもしれない。

大きな病気になるかもしれない。

介護が必要になるかもしれない。

飼い主様自身が事故にあうかもしれない。

自分に何かあった時、フォローしてくれる人を探しておかないといけない。

 

何としてでも飼い主様は、迎え入れた仔よりも先に逝かない努力をしてください。

健康を考えてください。

お酒の飲みすぎ、タバコの吸いすぎに注意してください。

 

残された仔は、飼い主様を忘れられないんです。

私達は、ここに来た仔たちみんな、家族と思って接しています。

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でも、飼い主様に負けてしまうのです。

私達には触らせてくれない仔が飼い主様には直ぐに甘えるんです。

尻尾を振るんです。

それが死ぬほど悔しいんです。

 

私達のことはどうでもいい。

論理的に進められないこと、

家に帰れないこと、

確かにあるけれど、好きで選んだ道です。

 

動物のことだけ考えてあげてください。

家族のことだけ考えてください。

 

浅い呼吸で仮初めの家族に看取られようとしている仔たちがいること、

知ってください。

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飼い主がなくとも頑張っている仔たちが知ってください。

お願いします。

精一杯愛してあげてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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